あア探偵事務所

私の事務所「もり探偵事務所」は、代表である私自身の名をつけました。

実は、こういう調査事務所は意外にも少ないです。

というか、ほとんどありません。

一昔前までは、「あ」から始まる探偵事務所・興信所ばかりでした。

 

「青」「赤」「愛」「相」などなど、「あ行」の漢字の事務所。

もしくは「あ」がつく女性の名前。(あ●◯子探偵事務所)

それから「ア」から始まる読みやすい横文字。

もちろんこれは偶然でもなければ、「あ」がつく女性代表者がたまたま多い……というわけでもありません。

広告戦略です。

もっと言うなら、かつて探偵事務所の宣伝・広告の9割以上が「タウンページ」だったころの名残です。

 

電話帳広告の実態

電話帳広告は、支払う広告料によってスペースの大きさが決まります。

そして、同じ料金を支払った場合、あいうえお順で掲載されます。

つまり、「あ」で始まる事務所であれば、他の事務所よりも先に掲載されることになり、それだけお客様の目に止まりやすくなるわけです。

女性名が多いのは、女性客が多い業界の性質上、そのほうが安心感を与えるから。

さすがに最近の広告の主流はネットに移りましたので、昔ほど「あ」のつく探偵事務所ばかりではなくなりました。

それでも、自分の名をつける探偵事務所はほとんどありません。

 

探偵に偽名が多いワケ

以前知り合った同業者で、斉藤 (仮名)という名の探偵が居ました。

彼は自分一人だけでやっていたにも関わらず、名刺には「調査部主任 斉藤」と記していました。

そして、「大村」という架空の代表者を設定していました。

お客さんとトラブったとき、責任逃れするため、わざわざ上司を作っていたわけです。

依頼人からクレームが来た場合、

「申し訳ありません、代表の大村にしか分かりかねます!」とか、

「申し訳ありません、ぜんぶ大村の指示で……」といった感じで逃げるわけです。

「大村を出せ!」と客から言われても、「申し訳ありません、大村はただいま不在で……」

信じられない話ですが、実話です。

 

「あ」で始まる屋号にしろ、本名を出さない事務所にしろ、架空の責任者にしろ、うさんくさすぎる慣習の業界。

それが探偵業界なのです。

 

森のやっている「もり探偵事務所」

2000年。私が探偵事務所を開業した16年前。(現在からは23年前)

医者や法律事務所と同じように、ごく自然に、自分の名前を冠しました。

「あ」から始まる名前とか、キャッチーな横文字事務所とか、ウケのいい女性名とか、責任逃れのための架空の代表者なんて、これっぽっちも思いつきませんでした。

ある意味青臭く、正直で、探偵業界では、変わり者だったのです。

ベテランの域に達した現在でも、私の中には、業界の慣習に染まりきっていないピュアな部分が残っています。

正々堂々、ごまかし抜き。自分の名前にプライドをもった探偵で居たい……

もり探偵事務所という屋号には、その想いがこめられています。

この想いはきっと、依頼人さまにとっては、いい方向に結びつくと自信をもって断言します。